| +Bitter Chocolate+ |
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マリーメイアの乱の後、全てが終わり俺が目覚めた時にはもうデュオの姿はどこにもなかった。 あれから一年。 俺はリリーナのSPにはならず、一般人として大学に通っている。 そして、あの日からずっとデュオの行方を追っている。 だが、依然として痕跡すら掴めずにいる。 デュオは今どこにいるのか? 諦めきれずに今日もパソコンに向かう。 繰り返される日常。 今日の講義も終わり、いつものように帰り仕度を済ませ門に向かう。 そこで不意に声をかけられた。 「よっヒイロ!久しぶりだな!」 あれだけ探しても見つからなかった相手が、今目の前にいることに咄嗟に思考が回らない。 「……デュオ。」 ひどく驚いているのが自分でも分かる。 「そうそうデュオ君。忘れちまったのか〜?」 ひでぇ奴と付け加えてくる。 忘れるわけないだろう……忘れられるわけないだろう。 どれだけ自分はコイツを探していたのか、どれだけ自分はデュオに会いたかったのか。 ひどいのはお前の方だ。 「何しに来た?」 一年も隠れておいて今更自分に何の用があるというのだ。 「えっとー、久しぶりにお前と話したいな〜と思って。ダメか?」 駄目なわけがあるか。 「いいだろう。話は俺の部屋で聞く。」 すぐそこだと言って、俺は歩き出す。 後ろからデュオが付いてくることを確認して、俺は逸る気持ちを落ち着けた。 「適当に座れ。」 部屋を珍しそうに眺めているデュオにそう声をかけて、俺はコーヒーを淹れる準備をする。 「何にもないのな、この部屋。」 「必要ないからな。」 そう必要ない。 大学に通う為と、デュオを探す為だけに使っている部屋だ。 「ふ〜ん。」 淹れたてのコーヒーをデュオに渡すと、サンキュと言って受け取った。 一口飲むのを見計らってアイツに今日の目的を尋ねた。 「それで、何の用だ?」 そう質問されてデュオのカップを持つ手に力が入った。 「あ〜うん。」 カップを置いてポケットの中をゴソゴソしている。 そしてそこから出した箱を俺に差し出す。 「コレ、渡しに来たんだ。」 「………中身は?」 「チョコ。」 「チョコレート?」 「そっ、チョコレート。」 ふざけているんじゃないのは気配で分かる。 だが何故チョコレートを自分に渡すのかが解らない。 手の中にある箱を見ながら考える。 「今日、バレンタインだろ?」 だからだよ、とデュオが早口で言ってコーヒーを口に含む。 「バレンタインとは何だ?」 「………。」 今デュオがすごく嫌そうな顔をしたのが判った。 「デュオ。」 「……お前本気で言ってんのか?」 「だから何だと聞いている。」 「バレンタイン!……聞いたことないのか?」 こんなに聞き返されなくてはならないほど、そのバレンタインというのは大事なものなのか? 「だから何度もそれは何だと聞いている。」 「……バレンタインにはチョコを渡す習慣があるんだよ。」 「………それだけか?」 「へっ?」 「それだけかと聞いた。……お前はそんなくだらない習慣の為だけに来たのか?」 1年ぶりに現れたと思ったら、チョコを渡しに来ただけだなんて信じられるか。 「他に何かあるのか?」 「………。」 「1年も隠れておいて、それだけの為にわざわざ来たのか?」 「ヒイロ……。」 デュオは知ってるはずだ、俺がずっと探していたことを。 それを知っていながら隠れていたのに、何故今日になって現れたのだろう。 本当にチョコを渡すだけの為に来たのか? 「……バレンタインデーはさ、女の子が好きな男にチョコを渡して愛を告白する日なんだ。」 デュオが言いにくそうに説明をする。 バレンタインデーという日が存在するらしい。 その日は女の子が好きな男にチョコを渡すらしい。 そして愛を告白する日らしい。 愛……告白……!? デュオが、俺に!? そうとしか考えられない。 意味を理解しデュオの顔をじっと見る。 デュオはちょっと照れながらこう言った。 「もう分かってると思うけどさ、俺……お前のこと………好きなんだ。」 デュオが俺を好きだと言った。 それは思ってもみなかった嬉しい出来事で、すぐにでも自分も好きだと言いたかったが、 色々腑に落ちない事があった。 「俺の事が好きなら、何故お前は1年も俺の前に現れなかった?」 これが一つ。 「俺がお前を探していたことは知っていたんだろう?」 これが二つ。 「何故今頃になって現れた?」 これが三つ。 「答えろデュオ。」 俺は少し驚いている相手に答えを促す。 「お前が俺のことずっと探してたのは知ってたよ。知ってて会いに行かなかったんだ……。」 「だったら何故今会いに来た?」 「………1年間お前が俺を探し続けてくれたから……。だから俺も逃げてちゃ駄目だって思ったんだ。 ……お前に会うのが怖かった………。 でも今日はバレンタインだし、思い切って会いに行くには丁度いいと思ったんだ。」 デュオが真剣に自分の思いを告白してくれているのが伝わってくる。 「ヒイロのこと好きなんだ……。でも別にお前に俺を好きになって欲しいとか、 俺と付き合って欲しいとか思ってるわけじゃないから。」 だから安心しろと、デュオが慌てて付け加えてくる。 「返事はいらないのか?」 俺がお前をずっと探していた理由を何故聞かない? 「…今はいい。もし聞かせてくれるんなら来月また…うわっ!」 俺はデュオの手を引き抱き寄せることによって続く言葉を遮った。 そして耳元にそっと囁く。 「俺も好きだ。」 硬直したままの相手に更に告げる。 「1年も待ったんだ。もう1月も待ちたくない。」 もう待つのは嫌だ。 その言葉にデュオの手がおずおずと俺の服を掴む。 少し不安げに向けられる顔をじっと見つめ返す。 「……本当か?」 デュオがボソッと聞いてくる。 「ああ、俺は嘘は言わない。」 今は信じなくてもいい、必ず信じさせてやる。 「ホントに俺のこと好きなのか?」 「ああ。」 何度でも言ってやる。 「よかった。」 そう言って笑うデュオがとても綺麗で、思わず軽く口付けた。 そして驚いた顔をしているデュオをもう一度強く抱きしめた。 「ヒイロってさー甘いものとか大丈夫なのか?」 「特に問題はない。」 「ふーん、一応ビターチョコにしてみたんだけど。」 もう一度コーヒーを淹れ直して、デュオがくれたチョコを二人で食べる。 「やっぱあんまり甘くないな。」 「そうだな。」 もう一つとデュオが俺にチョコを食べさせてくれた。 確かに甘くない、でもデュオが食べさせてくれるチョコは何故か甘く感じた。 2人ならビターもスイートに変えられる。 それがバレンタインデー。 あとがき |